先週、長瀞へ一泊旅行をした。二人での旅行は去年9月の湯河原以来。
長年、東京の西郊に住んでいる。にもかかわらず、高尾山に登ったことがないし、秩父へも行ったこともない。そこで今回は西武線の新型特急ラビューに乗って長瀞へ行くことにした。
大学院時代に仏子で合宿をしたことがあった。そこから先へ行くのは初めて。
まずは所沢で特急ラビューに乗車。満席だった。奇抜なデザインと黄色いシート。これを承認した人はかなり勇気がある。乗り心地は快適で窓が大きいのも旅心をくすぐる。車窓は徐々に山間に変わっていく。


妻と私では旅に対する姿勢が違う。私は事前にたくさん調べることが好きで計画を立てることも好き。一方、妻は旅先でのサプライズを楽しみたいと言って、事前には情報はなるべく入れない。だから私たちの旅行はいつも、妻が驚くように私が計画を立てる。なかなかいいコンビネーションではないか。
終点の西武秩父駅で下車して秩父鉄道の御花畑駅まで歩いて乗り換え。長瀞駅で降りると人でごった返していて驚いた。陽射しがまぶしくて気温も高いので、とりあえず宿まで歩き、荷物を置いた。宿泊先は長生館。
ランチをとるために駅前の商店街に出てみたけれど、どこも行列。日陰のある店を選び、舞茸の天ぷらそばとくるみ汁のそばを食べた。
今回の旅行では誕生日に買ってもらった日傘が役に立った。それでも、あまりに暑いので、散策は後回しにして宿へ戻った。部屋の準備ができていたので早めにチェックインできた。
宿は荒川に面している。涼しい部屋で一休みしてから、長瀞観光の名所である岩畳へ出た。


川の流れが緩やかなところを「瀞」(とろ)という。長瀞という地名はそこに由来する。
長瀞観光、一番の目玉はライン下り。初日は猛暑のために舟はやめて、日傘を差して岩畳を川上に向かって歩いてみた。
岩畳はミルフィーユ状に重なった岩場。対岸には自然につくられた崖や断層が見える。自宅から数時間で来られる首都圏にこんなに自然が豊かなところがあることに感動した。奇岩や断崖は見ていて面白いけど、どうしてそんな地形ができたのかはまったくわからない。『ブラタモリ』を読んで予習しておくべきだった。


宿は快適だった。最近リニューアルされたらしく、新しく清潔感があった。夕食には鮎の塩焼きや鯉のあらいもある山里らしい料理だった。武甲政宗という純米酒を呑んだ。これまで武相(武蔵と相模)や相武という言い方は聞いたことがあったけど、武甲(武蔵と甲斐)は初めて聞いた。
女性客が多く、男湯はいつ行っても空いていた。写真は宿のウェブサイトから借用した。
旅先で話すことはいつも同じ。これまで行った旅行とこれから行きたい場所。家族のこれまでとこれから。
来春、娘が結婚する前に、もう一度、四人で旅行しようということで話がまとまった。


翌日は、いつもやる気のない旅行をする私たちにしてはとても行動的な一日だった。前日とは打って変わって人はまばら。月曜日の旅行はいい。宿も安いし、混雑もない。
まずはライン下り。途中に急流もあり、20分程度の船旅は楽しかった。前日ほどではないものの、気温は間違いなく30℃を越えていた。炎天下、駅を超えて宝登山神社まで歩いた。
宝登山神社は豪華で壮麗なところだった。鳥居は白くて大きい。本殿はたくさんの彫刻で飾られ、色も鮮やか。インバウンド観光客に人気というのもわかる。




宝登山神社から降りてくると、ライン下りで船頭のお兄さんが教えてくれたかき氷の専門店、阿佐美冷蔵があった。暑さしのぎにはちょうどいい。繁忙期には何時間も待たされるという人気店。月曜日なのでほとんど待たずに入れた。水がきれいなので、そばや氷が名物となったらしい。
フワフワのかき氷に秘伝の蜜。抹茶あんをスプーンに乗せて、氷と一緒に食べる。身体中が涼しくなった。
元気を取り戻したので、駅まで歩いて秩父鉄道で秩父へ。駅ビルで名物と言われるわらじカツ丼を食べた。小盛りを頼んだのに、十分に大きかった。


秩父では秩父まつり会館へ行った。3Dシアターで年間300回以上あるという当地の祭りを一年を通して見て、屋台と逆鉾と呼ばれる山車のレプリカを見た。レプリカといってもとても大きくて迫力があった。
秩父まつりについては、祭り好きの両親が見に来たことがあるので話だけは聞いていた。でも、ここまで街にとって重要な祭りとは知らなかった。3Dの映像と山車のレプリカを見るだけで街が注いでいる熱量が伝わってきた。


秩父まつり会館を出たときは予報通り雨が降っていた。前日と午前中に降らなかったので運がよかった。元々は梅雨の最中なので、ライン下りも乗れないと覚悟していた。
バスで西武秩父駅へ戻り、土産物店で武甲政宗を買った。帰りのラビューは空いていた。
西へと向かう旅行は、帰りに東京駅や新宿駅で通勤帰りのラッシュに合わないので、最後まで旅気分が味わえる。そういう意味では、秩父地方や山梨県にまだ開拓の余地がある。
近場でも十分、旅情を感じて気分転換もできることがわかった。
帰宅してこの文章を書きながら、次の旅行について考えはじめた。これから先にも楽しいことが待っていると思えることはいいこと。うつ除けになる。旅行計画は効果的なストレス・コーピング。
最後の写真は、「関東の駅100選手」に選ばれている長瀞駅の木造駅舎。

